新年も早くも半月余りが過ぎました。
昨年、奈良市営墓地の新たな使用者となられた方々は、正式な使用開始となるのが今年の2月1日からとなります。、そろそろお墓をどうしようか、少なくともまず巻石だけでも、といったご検討を始めておられる方も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、弊社が昨年行なった、寺山霊苑で新しい巻石を設置する工事につきまして、ご紹介してみたいと思います。
そもそも「巻石」とは何か、というところからですが、巻石というのはつまり、墓所区画の外周に沿って、この内側がこちらの区画です、ということを明示するために囲い状に置かれている石のことです。
きちんとした巻石が石で作られる前は、ブロックが並べられているだけ、というところもありますが、今ではきちんと作られたお墓で巻石がない区画の方が例外的でしょう。
区画区分をはっきり示す、というのが巻石の第一の役割です。
奈良市営墓地の区画は、基本的に2メートル×2メートルです。
巻石はその大外いっぱいに作られるのではなく、隣の区画との空きを見まして、左右数センチ程度控えて作られているところが多いはずです。
そのあたりは、施工の際に現地も確認しつつ、お客様に説明し、完成予想図面なども作成して提出します。
工事の際は、奈良市に対しても工事届と図面を出す必要がありますね。
区画は、引き渡しの状態では更地になっています。
むき出しの土のまま、何も置かれていない状態です。
巻石工事の際にはまず床掘りといって、石が置かれる外周に沿って、土を少し掘り下げます。
上の写真の例は、左右とも既に出来上がった区画があるのでわかりやすいですね。
こういった場合、巻石の高さは両隣に揃えることが普通です。
地面を少し掘り下げるのは、基礎工事のためです。
基礎をせずにいきなり石を置いたのでは、すぐ傾いたりしかねませんので。
足元をしっかりしておくことが、工事のキモのひとつです。
次いで、掘り下げたところに、地下で石を支える杭を打ち込みます。
杭の置き方は、一本の延石を左右両端で支えるという形にしますので、延石一本に対して杭が二本です。
ではなぜ前だけ杭の数が多いのかと申しますと、正面部分は階段を挟んで延石が左右に分けられる形の設計だからです。
左右と裏は一本の長い石を通しますが、正面だけは短めの石を並べたようなイメージになります。
さて、このように並べた杭を下まで打ち込みますと、次の段階に移ります。
次はクラッシャーすなわち砕石を敷き詰め、よく突いて、地盤が安定するようにします。
その上に鉄筋を組んでいきます。
ご覧のように、鉄筋は一本置くだけではなく、二本を間でつないだレール状に組んでいきます。
こうした方が、とりあえず入っているというだけの鉄筋よりも、はるかに頑丈になります。
この鉄筋を巻き込んで、基礎のコンクリートを流して形を整えます。
いわゆる鉄筋コンクリートになるわけですね。
写真は少し、夕日で影ができて見えにくいですが、コンクリートを施工したところです。
ロの字型にコンクリートの基礎ができていることが、おわかりになるかと思います。
これが、石を置くための床のような役割を果たすことになります。
古い巻石ですと、申し訳程度のセメントで据えていたり、単に土に入れ込んでいるだけのものがあったりしますが、このように基礎から作った巻石とは安定がまるで違うことは一目瞭然かと存じます。
次の写真が石を据えたところです。
写真は正面向かって左側です。
中央部にあるのが階段ですね。
二段目の真ん中が大きく刳られたような形状をしておりますので、「くり階段」と呼ばれているものです。
よくご覧になると、石同士の合わせ目のところに、ステンレスの金具が取り付けられているのがわかると思います。
その形から、L字金具と呼ばれているものです。
これを付けておきますと、石同士が外れたり、傾いたりということが起こりにくくなります。
巻石を見えないところで補強するためのものですね。
今回の巻石の場合、四方四隅とくり階段の両脇、計六か所に取り付けられています。
最後に、巻石の内側に新しい土を入れて整地し、一番上に雑草対策として、防草土を敷けば新規巻石の完成となります。
今回はまだ、石塔はお建てにならないそうで、こちらの区画の工事としましても、巻石工事で作業完了となります。
もちろん、お客様のご要望に応じて、巻石と同時に石塔の工事を行なうことも可能です。
また、石塔のタイプや石の種類はもちろん、巻石の形についてもご希望がございましたらご相談ください。
できるだけお客様のご意向に沿いながら、よいお墓を作っていければと存じます。
今回は寺山霊苑での新規巻石設置工事の事例ご紹介でした。